Obsidianにおける、つぶやきドリブンのノートテイキング


この記事は Obsidian Advent Calendar 2025 20日目 の記事です。

今回紹介するプラグインは以下のURLからご利用できます。

maybefix/nods: Self-chat like ChatGPT or X (formerly Twitter) in Obsidian.

はじめに

 僕はかつてツイ廃でした。Twitter でそこそこ長いツイートをして、他人にその思考の経路を見られながら壁打ちを行う人でした。
 今は違います。Twitter、いえ、忌々しい X とかいう呼び名になったアレをつぶやきツールとして使うのは気が引けます。システムの安定性クソ喰らえ、バズれば何でもいい!みたいなシステムを作っている、そんなイーロン・マスクの思想があんまり性に合わないのです。X のような魔境に思考を預けるのは違う気がします。
 現在、僕は BlueSky を根城としています。X より落ち着いていて、洗練されており、また使用感もかつての Twitter ライクです。では今の僕が Twitter の代わりに BlueSky で思考を垂れ流して公衆の面前に壁打ちをしまくっているのかというと、そういうわけではありません。あの頃とは違います、世の中の倫理観も、自分の立ち位置も、価値観も……何より、使用するツールが変わっています。

 長々と書いてきましたが、この記事は Obsidian Advent Calendar 2025 への寄稿記事であります。なので、今から私は Obsidian で壁打ちができるプラグインの話をしていきます。

既存のプラグインではニーズを満たせなかった

 この記事の読者は割と熱心に Obsidian を追っているか、Obsidian とは適度な距離を保ちながらもPKMツールとして活用されている方々がほとんどでしょう。
 そんな方々にとって、Obsidian でつぶやけるプラグインといえば、Thinoがまず最初に思い浮かぶ方も多いと思います。体感で3割くらいの人がこの Thino を使っている気がします。
 それから、この Obsidian Advent Calendar を主催している tadashi-aikawa 氏のMobile First Daily Interface (MFDI)も候補のひとつでしょう。Thino より軽量で、起動も早いプラグインです。
 しかし僕はこの2つを使っていません。なぜですか。

 答えは、僕が Obsidian でデイリーノートを使っていないからです。
 Thino も、Mobile First Daily Interface (MFDI)も、基本的にデイリーノートをベースとしたプラグインです。つぶやきはデイリーノートに格納されていき、それぞれのつぶやきには発生時刻が記されます。
 しかしですよ、Twitter とか BlueSky やってるときに、日付の区切りを意識してツイートしたことがありますか僕はありません。ある程度の思考のまとまりになるまで切り出すのは待ちたいタイプの人間にとって、日付はただのしがらみにすぎません。
 また、僕がデイリーノート自体をあまり重視していないタイプというのもあります。日記が書ける人はすごいと思います。僕は2日で断念しました。ましてクソツイートが重なりきったクソの地層を、僕はデイリーノートと呼びたくないのです。デイリーノートはもっと純朴なものであるはずです。目標を設定し、それに対してどれだけ近づけたかを書く手帳のような使い方とか。
 僕はデイリーノートを使っている人を揶揄したいわけではありません。デイリーノートを使っているのなら、素直に Thino や MFDI を使ったほうがいいと思います。他方で、そうではなくデイリーノートを使わずに日々の細々した「ノート未満のメモ」を取り続ける方法もあるのではないかと思うのです。
 (あと余談ですが、Thino の main.js は 1.6MBあるそうです。重……)

 デイリーノートを使わずに、日々のつぶやきを捕まえるにはどうすればいいか?
 現在、私はその答えとして、自作プラグインの「Nods」というものを使っています。
 実は、以前にも Nods について紹介した記事があります。

 しかしこれまで真正面から Nods の機能面について紹介した記事はありませんでした。これは、これまで Un および Nods を公開する気がなかったためです。
 今回はいい機会ですので、Obsidian Advent Calendar 2025 に参加するにあたり、これまでチラ見せしていた Nods について、GitHub にてリポジトリを公開しようと思っています。
 この記事では、Nods というプラグインが持つ機能、背景・成り立ち・立ち位置、Nods を中心としたノートテイキングの流れについて解説していきます。

つぶやくためのプラグイン Nods の機能

 Nods は、つぶやくためのプラグインです。入力欄(写真では「話しかけてください」と表示されているところ)であなたがつぶやいたものに、Nods 自身が「うん。」と頷いてくれるのが特徴です。
 Nods は Obsidian 起動時に、必ず右サイドバーで表示されるようになっています。現段階ではどちらのサイドバーに開くかなどの選択肢は作ってません。
 ちなみに入力欄は上下どちらに設定することも可能です。

 つぶやいたものに対して、1~3秒後(ランダム)に「うん。」とだけ返事してくれます。これがこのプラグインの最大の特徴で、「Nods(頷き)」というプラグイン名もここから来ています。
 ※設計思想については「Nods はなぜ生まれたか」参照

 つぶやいたものについては、ダブルクリックで編集できます。


ダブルクリックで編集

 おまけ機能として、Google Keep と Google ドキュメント みたいな感じで、つぶやいたものをノートへドラッグ&ドロップしてやると、ノートへの貼り付けも可能です。


ドラッグ&ドロップでノートへ貼り付ける

 つぶやきのログは、一時ログとして Markdown ファイルに JSON 形式で残ります。


メガネを割った日

 ログを書き出す、およびクリアすることで、それまでに書かれたつぶやきのログを書き出すことができます。ファイル名は「nods-(YYYYMMDD)-(HHMMSS)」となり、写真のようにつぶやいた時間は残らず、改行区切りでログが残ります。


しょーもないことばっか書いてるわ

Obsidian Sync への対応

 Obsidian Sync で同期を行う場合、設定ファイル(data.json)であればプラグイン側の対応でデータ更新に対してログを更新し追従できますが、今回の Nods は別途 Markdown ファイルに一次ログを任せています。なので自動更新による追従が難しいという背景がありました。
 ということで、同期したタイミングで無理やりユーザーに更新ボタンを押させます。
 どういうことですか?

 こういうことです。
 起動時に「Nods を表示する」という画面が自動で表示されますが、このボタンがログ更新になっています。同期完了時にこのボタンを押すことで、最新のログを読み込めるという算段です。もちろん、途中で読み込んだ場合も、ビュー内に更新ボタンを作っているので安心ですね。

Nods はなぜ生まれたか

 この章については、基本的には 「うん、と頷くだけでいい」と思ったのでプラグインを作りました|MaybeFix でお話したことがすべてなのですが、それだとこの記事を書く意味がないので、もう少し説明します。
 このプラグインは、僕がChatGPTでの壁打ち時に、「もうAI側が「うん。」しか言ってくれなくても壁打ちとしては成立するんじゃね?」と思ったことが作成のきっかけになっています。
 AIに対してアイデアをぶつけるとき、その行為を壁打ちと呼びながらも、現実的にはそれは壁ではありません。壁は自分に話しかけてこないからです。壁であるならば、自分が投げてきたボールに対して弾み返してくれるだけでいい。それが、Nods の前身「Un」を生んだ考え方です。

 Un を作る段階から、AIを使ったバイブコーディングによってプラグインを設計・開発していました。具体的には、ChatGPT を使っています。
 Claude Code とか Codex みたいなものを使いこなす高度な技術は持っていないので、もうチャット形式でバトルしながら作りました。それでも一応の形をつくれるあたりが、AI の進歩を感じるところです。
 とはいえ、TypeScript ミリしらの人がバイブコーディングをしても、「このエラーが出たから直して」レベルのことしかできないのが関の山。今でこそある程度(といっても1%くらいの知識しかない)のケースが想定できるので回避できるトラップも、最初の頃は踏みまくりながら作っていました。

 そう考えると、藤井聡太竜王はエグすぎる。→藤井聡太竜王・名人が今年ハマった「バイブコーディング」とは?|将棋情報局

 なお、UI のベースには Svelte を使用しました。Svelte については AI も古い情報しか持ってなくて、最新のドキュメントを読ませてもうまくいかないというジレンマがあるので、できれば使いたくないのですが、Un で(なぜか) Svelte を使ってしまったので、Nods でもやむをえず使っています。
 その後、Un を使用するにつれて浮かび上がってきた細かい不満点などを解消するため、ゼロベースでプラグインを作成し直したのが Nods というわけです。

Nods の立ち位置と、コミュニティプラグインとの距離感

 Nods は純粋なつぶやきプラグインというよりも「壁打ち」の側面が強いです。頷いてくれる壁にボールを当ててる感覚ですね。
 かつ、つぶやきプラグインとして圧倒的なシェアを誇っている Thino に対抗する意味も余裕もありません。以前、試しに小さなプラグインを作ってコミュニティプラグインに申請したのですが、レビューに時間がめっちゃかかった上に、指摘もかなり仔細にわたったので、これを Nods のようなプラグインで行うのはちょっと大変かなと思い、これまで公開していませんでした。
 Nods はプラグイン本体の軽さ(Nods の main.js は55KBです)などでは Thino に対して優位かと思いますが、Thino は重い分だけ機能が充実していたり、入力欄がライブプレビュー準拠だったりします。バイブコーディングで立ちはだかれる規模ではない。
 ということで、今回公開するにあたっても、コミュニティプラグインへの申請は行いません。BRAT 経由が最も簡単なインストール方法になるかと存じます。

Nods を中心としたノートテイキングの流れ

 このプラグインはドッグフーディング(自分で作って自分で使いながら改良している)で開発しているので、ここからはそんな僕の実際の使い方について説明していこうと思います。といってもとてもシンプルなので、ここでは簡単な図解のみを行おうと思います。
 

 やっていることはこれだけです。
 僕は Obsidian Sync を使ってスマホとPC(Windows)の Vault を同期しているのですが、スマホでの Obsidian 使用の8割はこの Nods からのつぶやきです。スマホでつぶやいてどんどんログを貯めていきます。
 貯まったログを、頃良きタイミングでクリアすると、自動でバックアップできるので、それを見ながら、切り出せるところはノートにしていきます。一発ネタっぽいやつは、そのままにします。
 ノートを見て気がついたことがあれば直接ノートに書き込むこともありますし、発展しそうならつぶやくこともあります。ログを見返して、そういえばこんなこと思いついてたっけ、と後から切り出すこともあります。
 僕のワークフローだと、ここに特定の一日という日付が介入する余地がありません。好きなタイミングでログを書き出せるのが重要な気がしています。

まとめ

 ツイ廃時代から、つぶやいたまま終わったアイデアや考えたちのもったいなさを痛感することが多くありました。今は Obsidian と Nods を使ってつぶやきをノートにしていくことができるので、考えのアーカイブ化やアトミック化が簡単になっています。
 今回作成したプラグインは以下のURLからご利用できます。BRATからのインストール、もしくはreleaseにあるzipを解凍後、.obsidian > plugin の直下に置いてもらえると動作すると思います。

maybefix/nods: Self-chat like ChatGPT or X (formerly Twitter) in Obsidian.